バドミントンで、1,300万円の損害賠償(H30.11.9更新)

  • Home
  •   »  さいきのワイドショー
  •   »  バドミントンで、1,300万円の損害賠償(H30.11.9更新)

何があった?

2人×2人で、バドミントンをしていたら、パートナーが振ったラケットが、自分の目に当たって、大ケガをしたそうです。

ケガした人は、片目が見えにくくなったので、ケガをさせた人に、
「病院代を払ってくれ」
「今までと同じように、仕事ができなくなったので、損した分を払ってくれ」
「ケガをさせて、ごめんなさい、のお金を払ってくれ」
と、裁判所で話し合いました。

その結果、2審の高等裁判所で、
「ケガをさせた人が全部悪いので、1,300万円、払ってあげなさい。」
と決定しました。

2審?高等裁判所?って、なに?

知っている人が多いと思いますが、「小学生でもわかるホームページ」ですので、簡単に説明します。

裁判は、3回行うことができます。
なぜならば、裁判の決定は、誰が何と言おうと、どんなに不満があっても、言うことをきかなければいけない「命令」だからです。

命令の力は、とても強く、もし、「お金を払え」と言われたのに、払わない人がいたら、
・その人の貯金を勝手に持って行く
・その人の仕事場に行って、給料を勝手に持って行く
ということもできます。

ほとんどドロボウのようなことが、法律でOKとなるわけです。おそろしい!

ですから、
・絶対にまちがいがないように、
・不満がある人は、「いや、やっぱりおかしい!」と言えるように、
3回話し合うことができるのです。

1回目、2回目、3回目の裁判を、それぞれ、1審(しん)、2審、3審と言います。
「審」とは、「審判(しんぱん)」のことで、「話し合って、決めること」という意味ですが、特に裁判所の話し合いのときに、使われる言葉です。

そして、裁判所には、
「1.簡易裁判所」「2.地方裁判所」「3.高等裁判所」「4.最高裁判所」
の4段階があります。

裁判所は4段階ですが、話し合いは3回ですので、
「1.2.3.」で裁判するか、「2.3.4.」で裁判するかの、どちらかですね。
(例外はあります)

上の「何があった?」に書いた、「2審の高等裁判所」とは、
「高等裁判所で話し合った、2回目の裁判」
という意味です。

今回の裁判のポイント

ケガをさせた人が、ケガをした人に、払うお金が、高すぎるか?安すぎるか?
ということが、話し合いの目的です。

お金が高いか?安いか?というところは、前に書いた「貴ノ岩と日馬富士の裁判の話」と同じです。
しかし、今回の事件は、話し合いのポイントが、ぜんぜん違います。

貴ノ岩と日馬富士の話は、ケガをした貴ノ岩が損をしたお金は、いくらか?
というところが、ポイントでした。
・本当に必要な病院代は、いくらだったか?
・貴ノ岩が、ケガで相撲をできなかったときに、いくら損をしたか?
・ごめんなさいのお金は、高すぎるのか?安すぎるのか?
こんな話し合いでした。

今回の事件は、「損をしたのは1,300万円」というところは、どちらも認めているようです。
(1,300万円が高いか?安いか?という話し合いも、あったのかもしれませんが、ニュースになっていないので、このページでは、なかったことにします。)

この事件のポイントは、「どちらが、何%(パーセント)、悪いのか?」という、「過失割合(かしつわ りあい」です。

過失割合(かしつわりあい)って、なに?

たとえば、あなたが、道で人にぶつかったとします。

なぜ、ぶつかったのか?
あなたが全部、悪いのか?
相手が悪いのか?
あなたには、他にも、ぶつかった理由があって、それが悪いのか?

このように、寝ながら歩きでもしないかぎり、ぶつかるのは、あなたの他にも、何か理由があるでしょう。また、理由は、ひとつとはかぎりません。

それぞれの理由が、
「ちょっと悪いのか?」「まあまあ悪いのか?」「とても悪いのか?」を、数字で表します。
数字が大きいほど、悪い、ということです。

上の絵では、ケガをした人も50%悪い、となりました。
だから、50万円は、誰も払ってくれません。
自分のせいだから、自分で払いなさい、となります。

過失割合が100%!!

今回の事件では、「ケガをさせた人が、100%悪い」「ケガをした人は、何ひとつ悪くない」
と、決定しました。

これに対して、インターネットでの皆さんの意見を見ていると、こんな意見が多いです。

① スポーツをするなら、ケガをするのも、当たり前。

② ケガをした人も、ヘタクソだったのでは?
**バドミントンをやったことがある人なら、わかるはず。

③ 裁判所の人は、バドミントンをやったことがないのでは?
**バドミントンをやったことがある人なら、もっと違う考えになるはず。

④ わざとじゃないのに、1,300万円も払うことになるのか!?

これからは、こわくて、スポーツができない!

うん、当然の意見です。
私も、最初は、そう思いました。

しかし、このページは、法律のお勉強のページです。
これらの意見について、法律的に考えていきましょう。

① スポーツでケガをするのは、当たり前、という意見

裁判所は、「ケガをした人は、ラケットが当たって、大ケガするとは、ぜんぜん思っていなかった」と言っています。

「ケガをするかもって、わかってて、バドミントンをしたのなら、他の人のせいにするのは、おかしいと思います。
でも、今回は、そうじゃない。」
ということです。

「スポーツしたらケガをするかも、と思っていない」とだけ考えたら、
「そんなわけない」と、誰でも思いますよね。

もし、今回のケガが、
「相手の足につまづいて、転んてケガをした」
「体と体がぶつかってケガをした」
「バドミントンの羽根が頭に刺さってケガをした」
だったら、たぶん、相手のせい100%になっていないと、私は思います。

しかし、裁判所が言っているのは、
「相手のラケットが、思いっきり、自分に向かって振られて、大ケガをするかも」
とは、普通の人は、思わないでしょう、ということです。

「バドミントンのうまい人なら、それも、わかっているはず」
と言いたい人は、続きのページを見てください。

② ケガをした人も、ヘタだったのでは? という意見

そうかもしれません。
そうかもしれませんが、うまい人と、ヘタな人を、同じように考えてはいけません。
同じように考えてしまうと、ヘタな人は、スポーツをしてはいけない、となってしまいます。

学校のクラブのように、真剣に取り組むバドミントンだったら、先生や先輩が、ケガについて教えたり、うまくなるまでは、2人×2人で試合をさせない、などをするかもしれません。

しかし、今回は、いわゆる「ママさんバドミントン」だったので、うまい人も、教える人も、だれもいなかったのでしょう。

もし、ケガをした人が、プロの選手とか、学生のときにバドミントン部だった、とかだったら、たぶん、相手のせい100%になっていないと、私は思います。

また、ママさんバドミントンの中に、うまい人や、教える人がいたら、ケガをしそうな動きをする人を教えなかった、ということで、その人の過失割合も出てくる、と私は思います。

③ 裁判所は、バドミントンをやったことがないのでは? という意見

もし、やったことがないとしたら、とても正しい決定がされたのかもしれません。

上の②ケガをした人も、ヘタだったのでは? という意見に書いたように、
・うまい人とヘタな人は、同じ責任ではない
・ケガをした人は、うまい人ではなかった(と私は思う)
ので、同じ立場で考えることが、大事だからです。

もし、裁判所が、元プロの選手で、「オレだったら、こう動く!」など言い出したら、それこそ、普通の人のことがわかっていない、ダメな裁判所です。

④ わざとじゃないのに?

刑事裁判では、わざとか、ウッカリかで、罰の重さが大きく変わります。
刑事裁判は、「どれだけ悪いことをしたか?」を考える話し合いですから、ウッカリだったら、罰も軽くなるでしょう。

しかし、今回は民事裁判です。
民事裁判は、「どちらの意見が、法律的に正しいか?」の話し合いです。
良いか悪いか? わざとかウッカリか? は、ぜんぜん関係ありません。

「わざとじゃないんだから、許してやれよ」
という皆さんの意見は、とても多いと思います。

しかし、裁判所は「法律的に」を考なければいけない場所なので、
「優しい気持ち」とか、「許してあげたら?」とかは、考えてはいけないのです。

だから、「裁判所は冷たい」とか「おかしい」という意見は、大マチガイです。
もし、おかしいなら、おかしいのは裁判所ではなく、法律です。
冷たいと思う人は、同じ裁判所で行う話し合いでも、裁判ではなく、和解(わかい)という話し合いもありますので、そちらの方法にしましょう。

(和解とは、自分と相手の話し合いで、結果を決めることです。
自分の家などではなく、裁判所の中で話し合うこともできます。
裁判所の中で話し合うと、話し合いの結果は、裁判と同じように「決定」「命令」となります。)

⑤ こわくて、スポーツができない、、

⑤ こわくて、スポーツができない、という意見

とても、とっても、とっっっても、むずかしい話です。
ここからは、法律の話ではありません。

裁判所は、こう言っています。
「趣味でもヘタでも、ケガをさせたら、責任はとらなければいけない。
今回の決定で、ケガをしたのに、責任をとってもらえない、という人を減らしたい。
そして、ケガをさせてはいけない、と、みんなが安全にスポーツするように、なってほしい」

この、裁判所の意見の中で「責任をとらなければいけない」の部分だけを見ると、
「もし、ケガをさせたら、と考えると、こわくてスポーツできない。」
「ケガをさせたら大変だから、ヘタな人は、スポーツの仲間に入らないでくれ。」
となるでしょう。

私も、最初は、そう思いました。

でも、そう言ってしまうと、「ヘタクソはスポーツするな」という新たな法律ができるだけで、何も解決していません。

そこで、何か別の方法を考えるうちに、裁判所が言っている、
「みんなが安全にスポーツするように、なってほしい」
の部分が、一番大事なところではないか? と思うようになりました。

アンケート 上へ戻る






プロフィール 問い合わせ 地図 QRコード


サイト内検索↓

屋  号 さいき司法書士事務所
司法書士 佐伯 由香里
郵便番号 604-0971
所在地  京都市中京区富小路通竹屋町上る桝屋町325番地3 森田ビル3階
電話番号 075-212-7522
FAX  075-256-0133
営業時間 不定休(お問い合わせページからご連絡をお願いいたします)
お問い合わせ